ご挨拶
私は2度に渡り舌がんの手術を経験しました。舌がんは他のがんに比べ圧倒的に患者数が少なく、情報が乏しい。唾液が出ず、常に口が渇き夜も満足に眠れない。食事は流動食のみ。電話で話をすると、何度も聞き返される。そのような不自由な思いをしていたとき、紹介された「口腔外科」で、初めて「口腔リハビリ」に出合い、マウスピースや口腔ジェルなどの存在を知ることになりました。口腔リハビリがご縁で知り合った西脇先生に患者会について尋ねたのですが、残念ながら東京にはないとのことでした。「なければ、創ろう」。最初の手術から9年経った現在、多くの方々に支えられ、以前と同じように仕事をこなせるまでに回復しました。西脇先生も「佐野さんのように元気な方が他の患者さんに勇気を与えることになるから、そういう会を設けるといいかもしれない」と背中を押してくださり、頭頸部がんの方向けの情報発信や交流に向けての活動をスタートすることになりました。「頭頸部がん患者友の会」は、患者の皆さんのために正しく、有益な情報発信を行うと患者同士の交流の場を定期的に設けていきます。がん患者として生きるのでなく、がんになっても自分らしさを失わず、天命を全うする。時計の針を戻すことはできませんが、これから先の人生をがんに支配されるのではなく、主体的に生きようじゃありませんか。
2016年10月
東京患者会代表理事 佐野敏夫